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証言その2 仲居 吉川郁子さん
「あだしはあんときぃ、板場でできた料理を
大広間まで上げる係りだったんだす。
そんでぇ、なんやら客室で えらい騒ぎに
なってるから お客さんば避難させぇ言われて
板場の勝手口から小川の小橋が近かったもんで
散歩さ出がけた人ば、宿さ戻らんようにて
誘導しとったです
女の人だすか？ 年配のご夫婦どか
ちょっとワケありの… そんでも みなさん
お連れさんがいだみたいですよ おひとりさんも
いだかもすれないげど、気にしてられんかったで
覚えとりません
お地蔵さんだすか？ あのお地蔵さんは
山の神さんのお使いで、山守さんたちが
足を滑らせて山から落ちんようにて、守って
くださるんだす。 したから受験生の親御さん
なんかも お参りに来るだすよ
けんど、腹ぁ刺されて怪我したお客さん
助かってよかっただす。腹だけでなぐで
尻のほうまで血だらけでぇ 危なかっただす
あだしがお話できるのは こんぐらいです
お客さんは全員 無事に避難したって聞いてます
がら、その女の人も無事だと思います」
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