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「あらあら、御主人様が早く来ていいわねぇ?」
「……さま」
犯人の横で彼女は手を紐で結ばれて宙に立たされている状況にいる。かすり傷程度に血を流している。泥もある。
「でもこんな汚いメイドなんていりませんよね?」
「あぁ、汚いメイドはいらない」
「ほら、御主人様にだって言われてるじゃん。お前はいらないんだよ。メイドは言葉で出来てるんだよ?それなのに君ときたら……」
そう言って犯人は声に出して笑う。彼女は涙を流しまくってる。私は心に決意を決める。
「あぁ、汚いメイドはいらないよ。お前みたいに心の汚い奴は特にな」
「ほら、お前はずっと彼から心が汚いって思われてるんだよ」
彼女は声にならない嗚咽を流してる。辛いだろうが、もう少しの辛抱だ。
「俺は彼女に言ってない。そこのブス女に言ってんだよ?」
「誰がブスだって?メイドにブスはいないわよ?」
「あぁ、間違えた。心がブスな私の言葉を返してるお前だよ」
「ほう。それにしてもどうやってここが分かった?」
そんなもん、決まってる。心の中でそう呟き、自信を持って言う。
「彼女と私の心のつながり……いわゆる絆だよ。あなたに分からない魅力のなぁ?」
「もういい。静かに聞いていれば嫌味ばかり述べやがる。この子にはあなたを暗殺しようとしたのに、それもできないメイドはいらないなら……」
彼女は銀色の銃を私に向ける。
「今、何って言った?」
「だから使えないメイドはただのゴミと申し上げたのですよ。お分かり?」
「分かりたくないが、人である以上道具として見るんじゃないよ。なぁ、警官さんたち」
銀色の銃が彼女の手から落ちる。警官の銃で弾いたのだ。私のメイドに銃弾が飛ばないことを安心した。しかし彼女の手から刃物が出てきた。そしてメイドの首に差し出す。
「もう、やめませんか?過去に何かあったのかは知りませんが、彼女や私に当たってどうするんですか?」
「全ては金のため。金なら裏切らない。それだけよ」
「人を殺せば金は消えます」
後ろで警官の一人が言う。
「ならば私がここで死ねば問題ないですよ」
その言葉にメイドの彼女は首を激しく振る。それに伴い紐も動く。
やっぱりこの女性は主人に捨てられた過去があるのだろう。それならこう言ってやるか。
「私はあなたが好きだ。だから死なずに私のために生きてくれ」
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