おかえりメイド

翌日、私は会社から帰宅した。あの後、女性のことは別に気にしてなかった。だが、気になるのはメイドである。

玄関の鍵を開ける。

「ただいま」と誰もいないのが分かっていても言ってみる。
「おかえりなさいませ、御主人様！！」

私は耳と目を疑った。数日病院に入院するはずだった彼女が目の前にいる。それにメイド口調にもなっていた。

「ご飯にしますか？お風呂にしますか？」
「その前にもう一度聞かせてくれ」
「えぇ……おかえりなさいませ、御主人様」
「やはり幻聴じゃなかったか」
「はい、そうです。昨日のように耳につけていた耳栓のGPSを辿ればいいのに。まぁ、片方の耳栓はこの家にありましたが。あっ、御主人様に失礼を。ご飯にしますか？それともお風呂にしますか？」

私はそのスイッチの裏を見る。GPSレーダーがここを反応していた。彼女は帰ってきたんだ。

「おかえり」

私はそう言って家の中に入っていくのだった。彼女の質問のどちらかに答えて支度をしてもらうのだった。この後、メイドと私があのような事件に遭遇することは一度もなかったのである。

(完)