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疑っていると言えば疑っているのだが、この少女の頭や尻付近に生えている耳と尻尾はどう見ても本物みたいだ。
実際に今でもピコピコと動いているのを目にしている。
どちらかと言えば、狼人間とかその類の物だと言われたらあっさり信じただろう。
「と、すれば……お主としてはどうすればわっちがアマテラスだと信じるのじゃ?」
「どうするも何も……証明すればいいんじゃねぇのかなぁ。例えば今のこの大雨を止ませてみるとか」
「何じゃ、その程度か。なら外を見てみるが良い、雨なら上がっておるぞ」
「んなアホな。あの大雨が降って一時間くらいしか経ってないのに止んでいる訳が――」
少女の言葉に苦笑を洩らしながら立ち上がり窓際に立って外を見て目を見開いた。
帰った直後は大雨で暗かった空が今は多少の雲が存在する物の夕暮れの赤い空が見え、太陽がはっきりと見える。
「え、えぇー……うそー」
「かかっ。先まで力が出かったが、多少力が戻ったこの姿なら雨を止ませる事なぞ造作もないわ」
悠の反応を見て満足したのか、少女の顔には満面の笑みが表れていた。
何を思ったのか、少女はソファから降り悠の傍へと歩み寄る。
少女の謎の行動に眉間に皺を寄せながら見ていると、その小さな手が背中に触れた。
「な、何しているんだ?」
「……お主、人の身には多すぎる厄を溜めこんでおるのう。よく今まで五体満足で生きておったの」
――厄……?何のことだ?
少女の言葉を理解できずにその行動を見守る。
ただ背中を撫で続けるだけで自分に危害を加えようとしている訳ではないみたいだが、 不思議と
その手の感触が心地良い程暖かい。
気を抜いたら寝そうになりそうだ。
突如、グゥゥ……、と気の抜けた音が聞こえる。
無論、悠が出した音ではなかった。
後ろに居る少女を見ると、手の動きが止まっており裾で口を隠しながら目を逸らしている。
「……神でも、腹は減るんだな」
「――うむ……」
変に否定しない所だけは好感を持てた。
丁度自分も空腹を感じ始めた所でちょうど良かった為、夕食を作る事にした。
「何じゃ?どこかに行くのか?」
「夕飯を作るんだよ。俺も腹が減ったし。お前も食うだろ?」
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