309人が本棚に入れています
本棚に追加
台所に移動しながら少女にそう答えると、意外そうな表情で見ていた。
「良いのか?」
「腹を空かせている女の子をそのままにするほど俺は鬼じゃねぇよ。それに本当に神様なら空腹のままにさせたら罰が当たりそうだ。ただでさえ運が悪いのに更に罰が当たったら本当の意味で五体満足で生きられねぇよ」
「お、女の子……お主の心遣いに感謝するが、わっちはこれでもお主の何十倍どころではない時を生きておるのだがのう……」
台所へと向かう悠を見送りながら少女は少し不満が有りそうな声を出す。
背中越しに聞きながら悠は苦笑する。
「へぇ……いったい幾つなのやら」
「女に年齢を聞くなど失礼極まりないが……そうじゃのう、大よそ三千くらいかのう。あまり覚えておらんな」
少女は言いながら悠の居る台所へと向かって行く。
自分に向かってくる足音を聞きながら悠は鮭に下味を付けていた。
「よくもまぁ三千年も生きるな。俺だったら生きるのに飽きて自殺する」
「冗談でも命を粗末にするような事を言うでない、命とは尊い物じゃ。どれ、わっちも手伝おうか?」
そう言いながら悠の隣に立つ少女を意外そうに見やる。
神が料理できるなど見た事も聞いた事も無い。
「……料理できるのか?」
「簡単な物ならの。高天原に居た時に人間の生活を何度か観察しておるからの」
へぇ……と相槌を打ち、裾を捲り手を洗っている少女を見やる。
下味を付け終わったのでシートを敷いた鉄板に鮭を二人分乗せて既に予熱を済ませていた電子オーブンレンジに突っ込む。
「む……?魚を焼くのではないのか?」
冷蔵庫の中からレタス、キュウリ、トマト、と野菜を取り出しながら少女が問う。
どうやらサラダを作る様だ。
「今のこの現代だと一々焼かなくても、大抵は電子オーブンレンジに突っ込めば調理できるんだよ」
「便利な世の中になった物じゃのう」
などと呟きながら少女は持って来た野菜をザクザクと切っている。
少女がサラダを作っているので、自身は味噌汁でも作る事にした。
鍋に水を淹れて火をかけて、少女がシンクを使っているのでもう一つまな板と包丁を取り出して具材を冷蔵庫から取り出して刻む。
最初のコメントを投稿しよう!