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――本当に運が無いな……俺。
家の施錠をしながら悠は心の中で思う。
実際の彼は他人から見れば同情を誘うほど運が無い。
足を滑らせてそのまま溝(ドブ)に足を突っ込むのは序の口であり、頭上に植木鉢が降ってくるのも日常茶飯事だ。
酷い時は前方不注意で走行する車に轢かれそうになった事すらもある。
呪われているのではないだろうか、と本気で思うほどである。
クラスの人間はそんな自分を【不幸の避雷針】と、重宝しているらしいが当の本人からしたら堪った物ではなかった。
「――ッ!」
急に背筋が凍るような悪寒を感じその場から飛び退くと、先程まで自身の頭があった場所に重そうな植木鉢が落ちてきた。
「ごめんなさい!大丈夫ですかー!?」
頭上から降り注ぐ女性の声に釣られ上を見やると、二階建ての一軒家のベランダで女性が青ざめた様子でこちらを見ていた。
「大丈夫です、怪我もしていませんので気にしないでくださーい!」
頭上の女性に少し大きな声でそう言いながらそのまま学校へと歩いて行く。
もはや植木鉢が降ってくる事など慣れてしまったので今では直感で避けるのも容易くなってしまった自分が悲しく思いながら。
空笑を浮かべたい所だが、今度は前方からかなりのスピードで車が迫ってくる。
元々端に寄っていた為、避けるのは容易かったが、サイドミラーにぶつかりそうになり更に後ろに下がった時、右足がガクッと落ちた。
水の中に足を入れる不快感は無かったが、代わりに足首から鈍い痛みが走りだした。
「……こりゃ、少し捻ったか……」
車が過ぎ去るのを確認してから痛む右足を排水溝から引き上げる。
少し右足を地面に押し付ける様に力を入れるが、歩けないほど痛い訳じゃなかった。
ため息を交えながら悠は痛んだ右足を引き摺りながら歩いて行く。
※
「はあぁぁぁ……」
自身の所属するクラスに着くなり、悠は机に突っ伏して盛大なため息を漏らす。
此処に来る前に保健室で右足首に湿布を貼って貰ったのであまり足に負担を掛けなければ平気なはずだ。
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