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どちらかと言えば今日の朝で不幸がいつもより多い。あの後も黒猫が横切ったり、鳩からの爆撃を受けそうになった。
いい加減この不幸の連続が毎日続くとストレスでハゲるのではないかと心配してしまう。
「よおっ、相変わらずため息ついているな、蘇芳」
「あ?どうした三島」
肩を叩かれながら声を掛けてきたのはクラスメイトで友人の三島(みしま)旭(あきら)だ。
中学の時からの付き合いであり、ほぼ腐れ縁に近い者を感じる。
「特に用が有るって訳じゃねぇけど、また登校中に不幸でもあったのかなってな」
「大当たりだよ。右足を捻ったのが一番痛い」
登校中の出来事を旭に話すと、ニコニコしていた表情がどんどん曇っていく。
「今日は随分とひっでぇな。しかしその車、最悪訴えれるんじゃねぇのか?」
「無理、ナンバー見てないし目撃者も居ないからどうしようもない。不幸だったと見過ごすしかない」
「そっかー。まぁ、登校中それだけ起きたんだ。帰る分はもうないんじゃねぇか?」
「そう祈るよ」
そこまで話したとき、教室中にチャイムの音が鳴り響いた。
教室内で談笑していた他の生徒も自身の座る席にのっそりと戻っていく。
「そんじゃ、俺は自分の席に戻るぜ」
「あぁ」
自身も机から身を離し、姿勢を正す。これから教師が来てホームルームが始まる。
あまりだらしなくしていると怒られる。いくら不幸だからと言ってそんな事で怒られたくない。
憂鬱な気分を引き釣りながらも、悠は姿勢だけは正しくし、教師を迎える。
「えー、ホームルームを始めるぞ。まずは最初に――」
担当教師が教壇へと立ち、複数の連絡事項を知らせる。
自分にとっては特に問題無いような事は聞き流しつつも、一つだけ重要な内容が出たので耳を傾
ける。
曰く来月の中旬から始まる夏季休暇を使用した全学年旅行についての事だ。
三泊四日の沖縄での旅行。それに伴っての班を決める事、なお家族同行可の事。
――流石、財閥の一族が経営している学校……なんて太っ腹な。
そんな事を思いながら夏季旅行について考える。
家族については両親が仕事の関係で海外に居て連れて行くのは無理。
班決めするクラスメイトについては……おそらく三島が誘ってくるだろう。
問題はいかに海での危険を対処するかだった。
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