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去年も同じく沖縄だったが、海に入ったら足が攣り、クラゲに刺されそうになり危うく 溺死になりかけたのが記憶に新しい。
遊ぶのが大好きなこの年頃の奴らから離れてどうやって海に入らないようにするか、それを考えなければならなかった。
一か月近く考える余裕があるとはいえ逆に言えば一か月しかない。
残りの教師の連絡を耳に流しながら今時から対策を考え始めるのであった。
「なぁ蘇芳、お前どうするんだ?」
「何がだ?」
時が流れ、全ての授業が終了し部活動、または下校時間となった。
悠は特に部活も何も入っていないので、教科書を纏めこのまま下校する予定だった。
その時に三島が自分の席に近づき話しかけてきた。
「夏季旅行についてだよ。七月までに班を決めないといけねぇんだし」
「確か四、五人だったな。俺とお前、後適当に野郎を誘えば良いんじゃねぇの」
そういうと、三島はわざとらしく呆れた様な素振りを見せる。
「野郎ばかりとか嫌だよ俺。せめて女子一人くらいは入れようぜ。夏季旅行は班毎に自炊するんだ
から女子の手料理とか夢が有ると思えねぇか?」
「なら頑張って誘え、別に俺はどうでもいい」
「いや、蘇芳も手伝えよ!?お前モテるんだからお前が誘えば高確率なんだって!」
などと言う三島に今度は悠が呆れる番であった。
三島の言う通り、若干だが悠は女性に好かれる方だ。
主な原因が悠は容姿が整っているというところだ。
とは言え、容姿を利用してまで女子を班に入れたいとは思わないし、そこから変な誤解とかは避けたい。
自他共に認める程に運が悪いのだ、下手な事で身を危険に晒したくないのが本音だ。
「そう言うのはNGだ。大体俺の運の無さを知っているだろ。下手な事をして学園の晒し者になるのは勘弁だ」
「んな、女子を誘うだけで変な事になるとは思えねぇけどなぁ……」
「知っているか三島。人生諦めが肝心という言葉。じゃあな、俺は帰る」
「おう、じゃーな。班についてはとりあえず自力で頑張ってみるよ」
ようやく諦めた三島に腕を上げて相槌を打ち昇降口へと向かって行く。
ゆったりと歩きながら何気なく窓を見やるとポツポツと雨が降り始めていた。
家を出る前に折り畳み傘を鞄に入れておいて正解だったと本当に思う。
ほどなく昇降口へと着き、外靴に履き直し扉を潜ると、先程までは降り始めの雨が今では大雨と言えるぐらい強くなっていた。
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