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「ほらよ」
ずっと伏せて動かない犬の眼前に皿を置くと、犬は鼻を暫く引くつかせてやがてペロペロと牛乳を舐め始めた。
「……ブェックシ!!あー……寒ッ!」
安堵した所で大きなくしゃみをしてしまい、犬がびっくりしたのかこちらを見ていた。
犬に夢中になり過ぎて自身の身体も相当濡れている事に気が付いた。
このままでは犬より先に風邪になりそうだった。
とりあえず犬を見てみると、また牛乳を舐めていた。
丁度良かったので悠は身体を温める為に風呂場へと向かう事にした。
「やれやれ、明日は土曜だし犬が食べる物と必要な物を買わないとな……」
そんな事をボヤキながら悠は脱衣所から出てリビングへと向かうと、自分自身の目を疑う様な光景が見えた。
まず、先程居た場所にあの白い犬が居なかった。
その代りにその場には尻にまで届きそうな白髪の長い髪、その頭頂部に犬の耳らしきものが天井を指すようにツンッと生えている。
更に見えたのは尾てい骨付近に生えている様に見える左右に揺れる白いフサフサなもの。
何よりも問題なのは、白い素肌を一切隠さず晒している幼い少女の身体つきの裸体だった。
それが先程犬にあげた牛乳を、丸皿を両手で掴みチビチビと飲んでいた。
――俺、疲れているのかな……。
度重なる不幸で遂に幻覚でも見たのだろうかと、左右に頭を振り、目を擦ってもう一度見やる。
しかし、再び目を開けて見えた物は先程と全く同じであった。
――んな馬鹿な!!
あまりにも突拍子もない光景を目のあたりにし、唖然とする。
気のせいか、頭の中でゴーンと鈍い鐘の音が聞こえた気がする。
「ん……?」
「…………」
目に映る全裸の少女が自分の存在に気が付いたのか、首だけこちらを向き凝視していた。
幸いマズイところは長い髪と座っているおかげで見えなかった。
「おぉ、先の人間か。お主には助けられたのう。感謝するぞ」
赤い隈取のような模様を施した可愛いと言うより美しいと言った整った顔を笑みに変えて少女は悠にそう言った。
――先の人間……?はい……?
理解しがたい事を言われ、悠は頭の中が混乱していた。
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