第1章

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 井戸の調査をした日の夜、亜塔は見事に熱中症で倒れていた。どうやらヘルメットのせいではなく、水分補給が足りなかったらしい。そういえば亜塔ははしゃいでいて水を飲んでいなかったなと、桜太は呆れてしまった。おかげで二日間部活は休みとなってしまった。まったく、勝手に乱入して勝手に休みを作るとは、困った先輩である。しかしここまで三年生の力も大きいので文句は言えない。  こうして急遽できた夏休みだったが、科学部のメンバーたちは全員がここで宿題をするという行動に出ていた。だれも夏休みを満喫する気がない。しかしそれでも休み明けのメンバーの顔は晴れやかだから凄い。 「いやあ。部活が楽しくて宿題出来ていなかったから助かったよ」  優我の言葉が科学部の全員の思いだった。変人の吹き溜まりと呼ばれているが、中身は健全かつ真面目。変である要素はおそらく誰もが宿題をしたことだろう。桜太はこういうところが周りから引かれるのかなと気づいてしまった。  気づくと気になることが出てくるものだ。桜太はそっと科学部メンバーの顔を確認する。メンバーは晴れやかな顔をしているが誰も日焼けしていない。今が夏だというのを忘れてしまったようだ。そして自分も日焼けとは無縁。やっぱり科学部は変人で構成されるしかないのだとも改めて思った。 「さて、次は何を解決するんだ?」  迅が数学パズルを解きながら訊く。実験やフィールドワークが続いて数字中毒が緩和されたかと思っていたが、この二日間の休みでしっかり復活してしまったらしい。 「トイレのすすり泣きと、動く学園長像よ」  情報を拾ってきた千晴がざっくりと答えた。思えばこの二つが怪談の相場ともいえる内容なのに、今まで放置されてしまったのだ。これが七不思議解明がどんどん違う方向に進んだ原因とも思えてしまう。
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