第1章

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「それに音が男子トイレからするのか女子トイレからするのかも不明だよな。しかも発生時間も解っていない」  音源を探る前に解決すべき問題があったと、桜太は情報提供者の千晴を見た。 「どうやら男子トイレらしいよ。うちのクラスでもこの話を知っている人がいたけど、男子だったし。まあ、そいつらも変な音がするってだけですすり泣きとは言ってなかったわね」  千晴もすぐに怪談を否定してしまう。理系クラスで話を聴くと、科学部と似たような結論に達して当然だった。  もしもこの場に千晴へと話してくれた穂波がいたら卒倒しているだろう。穂波は真剣に学園の不思議を探していたというのに、その努力を科学部が真っ向から否定しようとしているのだ。 「取り敢えず行ってみるか。男子トイレでの検証に女子の岩波さんは嫌かもしれないが、誰かが入ってきて使用する心配はないし」  結局は芳樹がまとめるといういつものパターンに落ち着く。それに千晴も一応は女子として心配されて安心した。このまま男子トイレに突撃されてはどうしようかと悩んでしまう。これで万が一誰かが用を足し始めたら容赦なく便器に張った押しても大丈夫だ。 「よし、それでは諸君」  桜太もいつもどおりいこうと号令を掛けようとしたが 「酷いよ。まだ俺が到着してないのに勝手に全部決めるなんて」  それに待ったを掛けたのは林田だった。走ってきたのかもさもさの天然パーマがさらにもさもさとしている。 「いや、先生が今日も来るなんて聞いてませんし」  そろそろ林田に慣れてきた桜太は突っ込んでいた。それに学校に来た理由は松崎であって科学部ではないはずだ。あの井戸調査の後に鉱石と化学式との関係を話し合って盛り上がっていたのは知っている。
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