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「一体どこのどいつだ。学校のトイレ、しかもこんな汚いところで活躍の場はないだろ?一人で楽しんでいたのか?」
動揺しまくるのは優我だ。明らかに使用済みのそれが山になっていれば男でも焦る。
「あれだ。18禁の動画を見ていたんだろ。それか無修正だ」
慌て過ぎた迅が思い切り正解の解ることを言ってしまう。
「あんたも見たことあるのね?」
千晴もゴムの正体が解り、迅を睨む。迅は無実だと首を振るが時すでに遅しだ。意外に健全とそういうことに興味があったらしい。
「それより水だ。水を流してみないと」
いずれ質問が自分たちに飛び火しかねないと、亜塔が林田をせっついた。
「はいはい」
林田はこいつらも男子高校生だったなと笑いつつ、足で水を流した。こういう時に和式は便利だ。踏めば何とかなる。
「先生。ここは年長者として片付けておいてください」
莉音は日ごろの恨みをそんなことで晴らそうとする。
「ぐっ。それより音は?」
嫌と言うわけにもいかず、林田は音源探しに話を戻した。
「ううん。すすり泣きのような音はしないですね」
聞き耳を立てるも、誰の耳にも水が流れていく音しか聞こえない。
「となると」
桜太はそろっと視線を使用不能の張り紙がされている個室に向けた。残る音源はここしかない。
「うっ。使える場所でこの惨事だぞ。何があるか解ったもんじゃない」
これには亜塔が逃げ腰だ。変人も予測できない事態には普通の反応しかできない。
「世の中、怖いのは怪談じゃないな」
目の前に不気味な存在として現れたトイレの個室に、桜太は思わずそんな感想を漏らしていた。
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