初めてのデート

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日曜日は幸い好天に恵まれた。 隆志は昼ごはんを早めにすませると、買ってきたジャケットとズボンを着て鏡の前で 何度もポーズをとった。 母と姉は不思議そうにそれを眺めていた。 隆志の住んでいる東横線の菊名駅から映画館のある横浜の桜木町駅まで急行ならば 20分足らずだ。 家にいても落ち着かないので12時半に家を出た。 上映開始は2時だからまだ十分時間はある。 隆志は急行に乗らず、普通電車に乗った。 電車の中でゆっくりと今日行く映画館、そのあとにお茶を飲む喫茶店、それが終わってから 散歩するつもりのみなとみらいについて昨晩検索したインターネットの記事を頭の中で 何度も繰り返した。 桜木町の駅が近づくにつれ、隆志の心臓の鼓動が耳の奥で鳴り響いた。 しかし、もうすぐで桜木町駅につくというところで、突然電車が緊急停止した。 前の電車の故障とアナウンスが入った。 東横線の故障は年中行事になっているが、なにもこんなときにと思うと腹が立った。 電車を蹴飛ばそうかと思ったが、そんなことで車掌に捕まったらデートに間に合わなくなる。 じっと我慢した。 電車は少し動いては止まり、また動くという状態でゆっくり進んだ。 隆志のイライラは募った。 結局桜木町駅についたときは上映開始10分前だった。 タクシー乗り場には多勢の人が並んでいた。 初デートに遅れるわけには行かない。 もし自分が映画館の前にいなければ彼女は帰ってしまうのではないか。 そんな不安が過ぎった。 隆志は改札口を出ると必死に走った。 買ったばかりのジャケットやズボンがクシャクシャになるのも構わず走った。 学校の100メートル走でもこんなに必死で走ったことはないと思うほど全力で走った。 前から歩いてくる人たちはびっくりして道を開けた。
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