0人が本棚に入れています
本棚に追加
スクリーンには上映中のマナーについての説明のアニメが流れていた。
ゆかりさんと隆志はそれに合わせてスマホの電源を切った。
ふっとため息をついたところで、急いでいたのでコーラとポップコーンを買うのを忘れていたのを
思い出した。
「ちょっと待ってて。すぐ戻るから」
隆志は席を立つと通路にある売店でコーラとポップコーンを買った。
そして入り口に毛布が置いてあるのに気がついた。
ゆかりさんはミニスカートだったから寒いかもしれない。
「毛布を一緒にかけ、その中でそっと手を握るというのもありだ」・・・とネットに書いてあった。
隆志は毛布を手にとると、また劇場に入った。
座席につくとすぐにゆかりさんにコーラを渡した。
「ありがとう」
ゆかりさんは両手で受け取った。
隆志の顔は綻んだ。
「冷えるかもしれないから」
そういって今度は毛布をミニスカートから露出しているきれいな膝の上にそっとかけた。
「隆志君て気がつくんだ」
まだ自分の膝の上にはおいていない。
そのうち寒いねとかなんとか言って自分の膝の上に持ってくればいい、
そして、そのときそっと手を握ることもできる・・・と思った。
スクリーンは上映中のマナーについてのお知らせが終わり、ガーという音をたてて少しだけ広がった。
目が慣れてきたこともあり、あたりを見回したが、意外と人が少ない。
自分達のようなアベックは周囲にはない。
どちらかというとオヤジが多い。
今度は他の映画の紹介が始まった。
テレビでやっているCMと同じだ。
惑星が地球に衝突する危機が迫っていて、それを宇宙工学専門の大学教授と若い女性の
美人のキャスターが人類救済のため立ち上がる。そして二人に愛が芽生えるといった
よくある話だ。
次のプロモーション映画はロスアンゼルスのイタリアマフィアと中国マフィアの縄張り争いだ。
そこにイタリアマフィアのイケメンと中国マフィアのドンの娘の恋がからむというこれも使い
古されたパターンだ。
しかしピストルの撃ち合いと爆弾の破裂と拷問といったドギツイシーンが多い。
隆志は少し気になり隣のゆかりさんを見た。
ゆかりさんはじっと見ている。
とりあえず嫌そうな顔はしていないのでほっとした。
最初のコメントを投稿しよう!