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そろそろ自分達が見る映画になって欲しいと思ったが。
スクリーンの画面が広がらない。
今度は日本映画だ。
映画のつくりが洋画と異なりしっとりしている。
どこかのオフイスの個室で偉そうな年配の少し脂ぎった男が秘書と何かを話している。
いきなり部屋にカギが掛けられた。
あわててその場から逃げ出そうとしている秘書に中年男性が襲いかかった。
「やめて下さい」
秘書の絶叫する声がスクリーンに響いた。
と同時に秘書のスーツが無残にも引き裂かれ、下着がはだけた秘書の体がスクリーンに
大写しされた。
隆志の顔は強張った。
横目で見るとゆかりさんは顔を下に向けている。
隆志の心臓がバクバクと音をたてている。
―なんでこんな映画のプロモーションが出てくるんだー
隆志の頭の中は恥ずかしさと情けなさでひっくり返っていた。
やがてスクリーンに縄で縛られた下着姿の秘書に中年男が近づくシーンがアップで映された。
「ダメッ」
秘書の哀願するせつない声が響いた。
ゆかりさんを見ると下を向いて唇を噛み締めている。
隆志はゆかりさんを連れて外に出ようかと思い腰を浮かした。
そこでスクリーンに「近日公開」という文字が出て終わった。
隆志はほっとして腰をおろし、ため息をついた。
そしてまたガーという音をたててスクリーンが広がった。
いよいよ予定していた映画が始まる。
ゆかりさんの気持ちを変えようと、ポップコーンを目の前に出した。
ゆかりさんはそれを小さな指でそっとつまんで口元に持っていった。
強張っていた顔も少し和らいでいたのでほっとした。
映画会社のマークが大写しにされた。
いよいよスタートだ。
隆志はシートにゆったりと体をもたせかけスクリーンに顔を向けた。
そっとゆかりさんを見ると、スクリーンをじっと見つめている。
隆志はほっとしてコーラを一口飲んだ。
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