バーミリオンの天使

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リュックと帽子は赤いけど、首元にボタンが付いている半袖のシャツは青色で、ひざ上くらいまでの短パンはベージュの色。 そうだよね、いくら京急が好きだからって、全身赤色を着るわけがないか、リュックのファスナーをよく見ると、ジッパーの部分にストライプが付いている。ヒモの先は、やっぱり電車、京急を正面から見たイラストのチャームが、ストライプの先に付いていた。 これも、未来の自分が買ったのか、隼人と二人で選んで買ったのかな、 それとも、何か用事で出かけて、お土産に、隼人のために買ったのかな、 そんなことを頭の中で想像すると、隼人のことを愛おしく思い始めた。自分の子供だから当然といえば当然か、 「隼人君」 「なあに?」 「その、リュックに付いている電車、やっぱり京急?」 「そうだよ、1000系っていうんだ、京急で一番多い電車なんだよ、快特とか、特急とか、急行とか、普通電車でも走ってるんだよ」 「そうなんだ、隼人君本当に詳しいね」 隼人は、身体を私の方に向けて、京急のことを語り始めた。一番好きな電車は1000系、一番好きな駅は三浦海岸駅、海から近いから、というのが好きな理由らしい。だから、出かけて家に帰るときに、『三浦海岸』行きの1000系電車が来ると、すごく嬉しいらしい。好きな食べ物はサツマイモ、自分で取ったサツマイモを天ぷらにして食べたのが美味しかったから、だそうだ。好きな色は、青色、バーミリオンではないらしい。野球を見に行ったときに、青のユニフォームでホームランを打った選手が格好良かった、だから青が好き。 電車は金沢文庫駅を出発した。しばらくすると、隼人の席側の窓に大量の電車が現れた。 「ここ、ここね、京急の車両基地なんだ」 隼人は、今までで一番の声で、私に教えてくれた。隼人が大好きな1000系も、こう見ると、京急もいろんな電車があるんだなと、私も見入ってしまった。
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