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「もうすぐ着くね、お姉ちゃんはどうやって帰るの?」
「うん、お姉さんは、隼人君とは違うバスに乗るよ、隼人君は、バスで帰るの?」
「うん、10番のバスで帰る」
「駅まで、誰も迎えには来ないの?」
「うん、来ないよ」
「おばあちゃんも?」
「うん」
「お母さんも?」
「うん、お母さん、仕事だから」
私は、覚悟を決めて、ある質問をした。
「隼人君」
「なあに」
「お母さんのこと、好き?」
自分が期待している答えが出なかったら、恐らく、答えまでの時間はとてつもなく長く感じるだろう、と思っていた。
そうではなかった、その答えは、想像以上に早く、想像以上に私の苦痛から解放してくれるものであった。
「好きだよ」
隼人はまた下を向いた。少し違うのは、うつむいた顔の中には、白い歯が見えて、照れくさそうに私から顔を隠していた。
「え、でも、隼人君、お母さんとあまり遊ばないって、言ってたよね?」
「うん、でもね」
お母さんといると、とても楽しいんだよ
野球見に行ったり
一緒にサツマイモを掘ったり
天ぷらも一緒に食べたり
京急フェスタも、最初に行ったのは、お母さんと一緒だったんだ
三浦海岸も、お母さんと一緒に海に行ったから好きになったんだ
お母さんといると、いつも笑顔で、すごく楽しいんだよ
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