1人が本棚に入れています
本棚に追加
「どうしたの?」
「一緒」
「何が?」
「お母さんと、同じ名前」
「本当に!偶然だね!」
「ぐうぜん?」
「うん、珍しいね、って言う意味」
「うん、びっくりした」
隼人君は再び白い歯を見せた。私もそれを見て、一緒に笑った。電車は神奈川新町駅に到着した。通過電車の待ち合わせのアナウンスが流れた。
「隼人君のおうちは、駅から遠いの?」
「うん、バスに乗ってね、ちょっと遠い」
「へえー、お姉さんもね、昔三崎口に住んでたんだよ」
「へー、そうなんだ!」
「うん、バスは、何番のバスに乗るの?」
本当は、知らない子供にこんなことを聞くのは気が引ける。でも、どうしても気なる、私の故郷にいる、もう一人の望月早苗を。
隼人君は何のためらいもなく答えた。私のことを、信用してくれているのかなと、少しうれしくなった。
「10番、三崎港行きのバス」
私の実家も三崎港行きの、10番のバス、こんな偶然があるんだ。
「10番のバスの、どこで降りるの?」
「こうようちょう、っていうバス停」
岬陽町・・・同じ町だ、あの町の望月性はうちしかしない。もしかしたら、たまたま同じ性の家族が、実家の町に引っ越してきたのかもしれない。でも、同じ「さなえ」という名前、珍しい名前ではないが、それにしても・・・
私は、隼人君の家族を知りたいという衝動に駆られた。というのも、心のどこかで、隼人君は、私と何かしらのつながりがあるのではないか、という期待に近いものかもしれない。
「隼人君のお家は、お母さんの他に誰かいるの?」
「おばあちゃんがいる」
「お祖母ちゃんがいるんだ、お祖母ちゃんの名前は知ってる?」
「んっとね、ひろこだったと思う」
弘子・・私の母親の名前。私は、確信を得るために、少し強引なお願いをした。
「隼人君、君のお家の住所、教えてくれないかな」
「どうしてそんなこと聞くの?」
隼人君の言うとおりだ。まったくの赤の他人が、自分の家の住所を聞くなんて、教えることなんてできないだろう。
最初のコメントを投稿しよう!