バーミリオンの天使

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「どうしたの?」 「一緒」 「何が?」 「お母さんと、同じ名前」 「本当に!偶然だね!」 「ぐうぜん?」 「うん、珍しいね、って言う意味」 「うん、びっくりした」 隼人君は再び白い歯を見せた。私もそれを見て、一緒に笑った。電車は神奈川新町駅に到着した。通過電車の待ち合わせのアナウンスが流れた。 「隼人君のおうちは、駅から遠いの?」 「うん、バスに乗ってね、ちょっと遠い」 「へえー、お姉さんもね、昔三崎口に住んでたんだよ」 「へー、そうなんだ!」 「うん、バスは、何番のバスに乗るの?」 本当は、知らない子供にこんなことを聞くのは気が引ける。でも、どうしても気なる、私の故郷にいる、もう一人の望月早苗を。 隼人君は何のためらいもなく答えた。私のことを、信用してくれているのかなと、少しうれしくなった。 「10番、三崎港行きのバス」 私の実家も三崎港行きの、10番のバス、こんな偶然があるんだ。 「10番のバスの、どこで降りるの?」 「こうようちょう、っていうバス停」 岬陽町・・・同じ町だ、あの町の望月性はうちしかしない。もしかしたら、たまたま同じ性の家族が、実家の町に引っ越してきたのかもしれない。でも、同じ「さなえ」という名前、珍しい名前ではないが、それにしても・・・ 私は、隼人君の家族を知りたいという衝動に駆られた。というのも、心のどこかで、隼人君は、私と何かしらのつながりがあるのではないか、という期待に近いものかもしれない。 「隼人君のお家は、お母さんの他に誰かいるの?」 「おばあちゃんがいる」 「お祖母ちゃんがいるんだ、お祖母ちゃんの名前は知ってる?」 「んっとね、ひろこだったと思う」 弘子・・私の母親の名前。私は、確信を得るために、少し強引なお願いをした。 「隼人君、君のお家の住所、教えてくれないかな」 「どうしてそんなこと聞くの?」 隼人君の言うとおりだ。まったくの赤の他人が、自分の家の住所を聞くなんて、教えることなんてできないだろう。
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