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「隼人君、知ってる?京急に黄色い電車が走っているの」
隼人は顔を上げて、私に微笑みかけた。
「知ってるよ、『イエロートレイン』でしょ?」
「そう!京急の、いっぱいある電車の中で、一種類しか走ってないんだよ」
「僕、まだ見たことないんだ」
「そうなんだ!お姉さんはもう三回くらい見たかな」
私は自慢げに三本の指を立てて、隼人に見せた。
「お姉ちゃん、いいなあ、僕、写真でしか見たことないよ」
隼人は携帯電話を取り出して、画像を私に見せてくれた。
「これは、誰が撮ったの?」
「お母さん、仕事の帰りに撮ったんだって、メールで送ってくれたんだ」
「そうか、でも、もしかしたら今日見れるかもよ」
その時、反対側の窓が黄色一色になって、上りの電車が到着した。私は急いで隼人の肩をたたいた。
「ほら、隼人君、黄色、黄色」
隼人が反対を振り向くと、私は窓を指差した。隼人は私のほうに身を乗り出して、反対側の窓を夢中に見始めた。
「初めて見た、すごい目立つね!」
「よかったね、隼人君」
イエロートレインが到着すると同時に、特急電車も動き出した。三崎口までは、あと40分で到着する。
電車は上大岡駅を出ると、加速を始め、金沢文庫駅に向かって走り始めた。隼人は窓をひたすら見つめ、そんな隼人を、私は観察してみた。
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