楼乱からの客人

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楼乱からの客人

五分咲きになった桜が庭の色を桜色に染める時期になり、 「なあ、ばあ様。なぜ男女は差別されなければならない?」 「それは男性の方が偉いからだと存じ上げております。若はとても多様な視点で物事を語る事が出来るのですね」 俺の質問にばあ様は上品に笑って答えた。 「なぜ男性の方が偉いのだ?」 「それは、男性である方々がこの国を創ってきたためであると私は考えております。 そういえば若はまだ一人の身でございますから。お見合いのご予定などはお考えですか?」 話を無理やり逸らされた事は、この鈍い頭でも理解できた。 「そうか、俺もそろそろ一人身でいることが厳しい年頃だったな、また考えておく」 はぐらかしをはぐらかす。これが俺とばあ様のいつもの会話だ。 「若、お客様がいらっしゃいました」 手伝いの者がそう言ってきたため、通せ、と言った。しばらくすると一人の者が入って来た。 「楼乱野乃殿でしょうか?」 「殿は要らない楼乱にしてくれ」 出会ってから数秒でそう言われたため、正直、面をくらった。この人物が現在の、楼乱の長、楼乱野乃木。中性的な顔立ちや、溢れんばかりの覇気のためよくは分からないが、おそらくこの人物も女性なのだろう。……先代であった沙羅殿の面影がある。 「……分かりました。では、俺のことは柳沢と呼んで下さい」 「時間はあまりないようだな。早速話し合いに入らせて頂く」 「……では、こちらに」 早速、主権を握られたようだ。
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