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「兼ねてからの疑問だったのだが……どうしてお前は敬語を使っているのだ?」
「……え?」
そう言われからやっと気づく。何を言っているんだ私は! 上機嫌の人に向かって何を言っているんだ!
「……いいや、何でもない、無かった事にしてくれ!」
「別に構いませんよ。好きで話しているだけですから……どうしてそんな話を?」
……こいつ、遠慮する気も無いのか? もういい、言ってしまうところまで言ってしまうしかない。
――いや、本当に大丈夫か?
一瞬の迷いが、私を極度に緊張させた。
「――私が、普通に接しているのに、そっ、そのような敬語で話されると、その、なんか……困る」
それを聞いてか、柳沢は顔を赤くし、少しうつむいた。……最後、少し上ずった声になってしまったがそれ以外何か不思議な事でもしてしまったのだろうか? いや、その後に目を少しそらしてしまった事が機嫌を害したか……いやそうではない。元々今の発言自体がおかしいではないか。どうしようか、どうすればよいのだ? 心臓が早鐘を打つ。
「分かった……では、そうさせて、貰おう」
なお赤い顔で、震えながら柳沢は言った。
何故声が震えている!?
その後も何か、私言ってしまっては、柳沢が赤くなっての繰り返しであった。正直、柳沢が怒っていないか、困っていないか、それだけが心配であった。
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