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楠木は立ち上がり、つかまれた足を振り回した。だが、その隊員の握力は予想以上に強く、離すどころか、逆に楠木の足を万力の様に締め上げた。
「いたたたた!!こンの・・離せぇ!!」
隊員達も駆け寄り、必死に2人を引き離そうとする。
「なんてぇ馬鹿力だ!おい!金田!どうしちまったんだ!?手を離せ!」
「グアオォォ!!」
金田は答える代わりに咆哮をあげ、凄まじい力で屈強な隊員達を振り払った。大きく口を開き、唾液を撒き散らして楠木の足に咬みつこうとする。
バンバンバン!!
金田の額に、3つの赤黒い穴が開き、後頭部から脳が弾け飛んだ。
「ウ・・」
金田は、いったん上体を起こすと、そのままゆっくりと背中から倒れていった。
楠木は、まだ硝煙をくゆらせる拳銃を構えたまま、はあはあと肩で息をしていた。その様子を隊員達が言葉もなく見つめていた。
「・・何よ。始末書でも査問でも好きにしなさいよ。どうせ報告はしなきゃならないんだから。」
楠木は、のろのろとした動作で、拳銃をホルスターに収め、隊員達を睨んでそう言った。隊員達もワケがわからないという様子で顔を見合わせたその時、
『なんだ!?何しやがる!?』
『おい!落ち着け?!どうしちまったんだ!?』
『クソッ、咬みつきやがったっ!』
上にいる隊員達の声だった。土方の声も聞こえた。さらにドタバタと暴れる様な物音も。
「今度は何よ・・・」
楠木ははあーっと深く溜息をつきながらも、階段を駆け上がって行った。
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