第3章 ~混乱~

1/12

45人が本棚に入れています
本棚に追加
/78ページ

第3章 ~混乱~

謹慎2日目。ソファで眠っていた楠木は、ばね仕掛けの人形の様に飛び起きると、すぐに壁の時計に目をやる。時刻は午前9時を回っていた。 「やべ!!また遅刻!!」 タオルケットをはねのけ、ショーツ一枚のあられもない姿になる。そこで、楠木は思い出した。 「あぁ・・しばらく休みなんだ。」 楠木は、ほうっと息を吐いた。冷蔵庫から牛乳パックを取り出し、今しがた寝ていたソファに、どっかと腰を下ろした。パックに直に口をつけると、ごくごくと喉を鳴らして牛乳を飲んだ。ようやく一息ついたところで、テレビのスイッチを入れる。どうやら、朝のワイドショーらしいが、また医療ミスでも起きて、その取材なのか、どこかの病院が画面に映し出され、それをバックに、若い女性リポーターが何やらまくし立てていた。楠木も顔くらいは知っているリポーターである。媚びるような笑顔が大嫌いだった。 楠木は眉間にシワを寄せ、大きく舌打ちをして、チャンネルを変えようとした。しかし、リポーターの発言に、思わず手が止まった。 『・・なお、亡くなっていたはずの遺体が次々と蘇生した点については、医師達も見当がつかないといったコメントに終始しており・・』 『榮倉さん、確認なんですが、安置されていた遺体が生き返った。ということで間違いないんですか?』 スタジオの司会者が困惑した表情でリポーターに問いかける。左右に座るコメンテーター達も顔を見合わせ、何かを話し合っていた。 『え!?ええと、はい、そうなんですよ!!遺体は・・え!?ちょっと、何よ!?』 バインダーを見ながら、しどろもどろになるリポーターから、画面が急にパンした。左右に画像が揺れたが、すぐに安定した。そこには、次々に到着するパトカーと警察の大型バス。そして、ヘルメットや盾で完全防備の警官や機動隊員が、続々と集まってくる様子が写っていた。 『榮倉さん!?今、大勢の警察官が病院に到着したようですが、何か新しい展開ですか!?』 楠木は、食い入る様に画面を見つめた。 「遺体が・・蘇った?」 楠木は事件を振り返りながら呟いた。そして、おもむろにスマホを掴み、「土方」とスマホに声をかけた。スマホはすぐに連絡先一覧から土方をセレクトし発信した。 『おお、楠木!お前もニュース見てるのか?』 コールする間もなく、土方の声が聞こえた。
/78ページ

最初のコメントを投稿しよう!

45人が本棚に入れています
本棚に追加