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病院内は阿鼻叫喚の地獄絵図そのものであった。それはあまりにも突然だったし、油断などというにはあまりにも辛辣だろう。誰が遺体が蘇り、人を襲うなどと考えるだろうか。
「早く!!こっちへ!!」
「向こうからも来るぞ!!気を付けろ!!」
「なんでだ!?間違いなく当たってる!!」
「助けてくれ!!早く!!」
院内は怒号に悲鳴であふれ返っていた。逃げる人々とそれを追う異常者達。制止しようとする警官隊。逃げる側は病院関係者や患者達だが、それを追う連中も病院関係者や患者達という奇妙な状況だ。警官隊はすぐに発砲を決断した。異常者達は、生きている人間達を手当たり次第に殺害していた。白い内装は真っ赤に彩られ、手や口を被害者の血で染めた異常者達が、新たな獲物を求めて徘徊している。
「もう一度説明しろ!奴らは何なんだ!?」
機動隊の指揮官が、院長らを前にデスクを叩いて言った。ここは一階のロビーで、前線指揮所が設置されていた。
「それが・・私どももどう説明して良いのか・・」
院長は吹き出す汗を拭いながら、周りの医師達と顔を見合わせた。
「あの異常者達を見たか!?看護士、医師、患者!ここの人間じゃないか!しかも仲間同士で殺し合いだ!知らんで済む話か!!」
隊長は顔を真っ赤にして叫んだ。医師達は体をビクッと震わせた。だが、誰も発言しようとしない。
『隊長!8階は生存者は発見出来ず!異常者達の勢いに圧されてます!増援を!』
『10階は奴らでいっぱいです!!弾が当たってるのに倒れない!!』
『9階もだ!放棄の許可を!くそっ!!撃ちまくれ!!』
無線からは、各階に展開している部隊からの報告が次々と飛び込んで来る。
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