45人が本棚に入れています
本棚に追加
さらに用心深く死体を調べていく。どの死体も、首を掻き切られていた。頸動脈からの大量出血による失血死。楠木はそう結論づけた。生存者はいない。楠木は唇を噛んだ。
顔を上げると、そこにはドアが開け放たれた遺体安置室があった。2部屋だ。そしてもう1部屋。取っ手の部分に、警棒が何本も差し込まれていた。中からは、ガリガリとドアを引っ掻く音。ドアはギシギシと前後に揺れている。中から何かが出てこようとしているのは明らかだった。
楠木はゆっくりドアに近付こうとした。が、その時開け放たれた遺体安置室から、ゆらゆらと何かが姿を現した。さすがの楠木も一瞬息を呑んだ。足が止まり、一歩二歩と後ずさる。
「・・!!?」
楠木はあの日の、あの異様な事件の夜を思い出した。自分のブーツを掴まれるあの気味悪い感触。それが今まさに再現されたのだ。
下を見ると血まみれの警官が、うつろな目で楠木を見上げ、その手はしっかりと楠木のブーツを掴んでいた。
「ウアァ・・・」
その声に今度は前方に視線を向ける。安置室から出てきたのは、白衣を着せられた男女だった。男性は頭に包帯が巻かれていた。女性の方は、白衣が乱れ、青黒く変色した乳房が露わになっていた。2人とも目は乳白色に濁り、顔は真っ青。鼻や耳から出血していたが、その血はどす黒く変色し凝固していた。
最初のコメントを投稿しよう!