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一方の土方も、楠木以上に苦戦を強いられていたが仲間達の援護もあり、ようやく10、9、8各階の防火扉を閉鎖することが出来た。だが、扉は内側から激しく叩かれ、その圧力に扉がわずかだがしなり始めていた。
「畜生めが!弾が足りやしねぇ!」
土方は弾切れになったショットガンを投げ捨てた。ショットガンはくるくると床を滑っていった。
「警官隊は全滅か・・」
同じくSTSの同僚の田中がそう言って、ショットガンを拾いあげた。
「まあ・・何つうかよ、皆起きあがってよ。血ィダラダラ流しながら向かって来やがった・・生気の抜けたツラに、光を失った目・・なのに、殺意と憎悪はギラギラしてやがる・・」
土方は唇を噛んだ。
「死んだ人間が、蘇生したって話は本当らしいわ。それで街は大騒ぎだもの。」
田中がヘルメットを外しながら言った。栗色の鮮やかな髪がこぼれ落ちる。田中絢子は、その容貌から男性に間違われることもしばしばだが、髪を伸ばしてからは初対面の人間からは性別の事で不快な思いをさせられる事は無くなったようだ。
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