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「上はどうだった?」
楠木は椅子にどっかと腰を下ろして聞いた。暑苦しそうにヘルメットを脱ぐと、鮮やかなオレンジ色のショートボブが映える。
「ひでえもんだ。各階の連中は皆、化け物になっちまった。防火扉は閉めてきたが、あの人数で押し込まれたら、そう長くは持たんな。」
「そう・・絢子、STSは総員に出動が?」
「ええ。非番の連中も総動員。市街は蜂の巣つついた騒ぎだよ。」
「市街?」
楠木と土方は顔を見合わせた。
「聞いてないの?あちこちで暴動が起きてるの。SATもあたしたちも、分散して投入されてるんだよ。政府は自衛隊に出動要請をかけたって話だよ。」
「暴動・・なんでこんな時に?」
美香は首をひねった。
「絢子よ、その暴動ってのは、まさか・・」
土方が眉をひそめて聞いた。
「ご明察。都内に化け物が現れたんだ。ここにいるみたいなの。どこから?そんなの知らないよ。都内の各警察署や警視庁に、110番がガンガン。回線はパンクだよ。」
美香と土方は再び顔を見合わせた。
「もうすぐ政府の緊急会見が開かれるよ。さあ、私達は一度本部に帰ろ。ここは武装機動隊が引き継ぐから。」
そう言って踵を返した絢子は、さっさと歩いていく。美香と土方も、やれやれという表情になり、後に続いた。
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