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『楠木、土方、いるか』
インカムから聞こえたのは、指揮官の斉藤の声だ。
「いるかも何も、そこから見えるっしょ?」
土方が後方に目をやって答えた。そこには、マイクロバスほどの大きさのSTS専用指揮車が見えた。斉藤はその中で各分隊長達と作戦を練っていたのだろう。
『5分後に突入する。屋上と正面からだ。貴様らは遊撃として好きに動け。以上。』
ザッと小さな雑音を残し、交信は終了した。
「…聞いた?」
「ああ。」
顔を見合わせ2人は頷くと、パトカーの前後に分かれ身を低くした。どちらから合図したわけでもなかったが、2人は同時にパトカーの陰から飛び出した。黒いヘルメットにマスク、さらに戦闘服から装備に至るまで、全てが漆黒のSTSのユニフォームはこうした作戦にはうってつけだった。
瞬く間にビル正面に取り付いた2人は、堂々とビル正面から内部に侵入した。作戦は緻密に立て、実行は大胆に、がSTSのモットーであった。既に突入班の主力はスタンバイを完了しているだろう。間も無く一斉突入だ。
2人は役目を理解していた。突入班のカムフラージュ。だから、遊撃なのだ。敢えて物音を立て、犯人の不安を煽る。階段を駆け上がり、犯人と人質達がいるフロアに差し掛かった。
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