第4章 ~敵は死人~

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「国立感染研究所の浜田です。まず、皆様が疑問に思ってらっしゃる・・そう、『感染者』についてお話しますわ。」 浜田は『感染者』という言葉を使った。すかさず記者から質問が飛ぶ。 「我々は蘇生した遺体を解剖し、徹底的に調べました。しかしめぼしい発見は出来ませんでした。ですが、死者を蘇生させうる要因として、いくつかの仮説を立てました。」 会場は水を打ったように静まり返っている。早く続きをと言わんばかりだ。浜田はそれを確認して、再びマイクに口を近付けた。 「仮説を精査していくうち、これは何らかの『ウィルス』による細胞の活性化の可能性が最も高いと判断しました。もちろん、現段階では、それすら仮説に過ぎませんが。」 浜田はそこまで話すと、傍らのペットボトルに手を伸ばし、ごくごくと水を飲んだ。そして、ぷはぁっと息をついて、再びマイクを握った。 「皆さんはご存知かしら?人間というものは、死んでも髪や爪は伸びるんです。心臓が停止しても、脳が直ちに活動を止める訳ではありませんし、細胞はしばらく生きています。それを踏まえて、もし、何らかのウィルスにより、人間の細胞や脳が活動を再開したとしたら・・」
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