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楠木と土方も、犯人の異様な様子が気になったが、それよりも部屋の隅に血まみれで倒れている2人の人質の確保が優先だった。
「土方!」
「おう!」
2人はそれぞれ人質の様子を確認したが、同時に顔を上げると、力無く首を左右に振った。2人の人質は既に息絶えていたのだ。
無理もなかった。2人とも、頸動脈に深い傷があり、それが致命傷となったのだろう。床には血だまりも出来ていた。だが、楠木はその傷が気になった。
(・・・咬み傷?)
楠木は眉をひそめて、犯人に視線を移す。犯人の口元は血まみれだった。だが、自身のほほの傷もあるから、判断はつきかねた。土方の方に目をやると、彼も腕組みをして難しい顔をしていた。
「確保!」
隊員達が犯人に群がり、羽交い締めにして床に体を押し付けた。結束バンドで両手首を縛り上げる。犯人は全く抵抗をせず、されるがままになっていた。
「こちらαチーム!犯人確保・・うぉっ!?」
無線で報告を行なっていた隊員が、声を上げてのけぞった。
『・・なんだこいつは!?』
『おい!動くな!!そこで止まれ!!』
階下からも怒声が聞こえた。正面からの突入チームだろうか。
「おい!大丈夫か!?」
「畜生!このクソが!噛みやがった!!いってぇ!!」
犯人を羽交い締めにしていた隊員は、左手を抑えて罵った。出血がひどく、だらだらと床に血が流れていた。一方、隊員を噛んだ犯人は、別の隊員に床に顔を押し付けられていたが、虚ろな目付きで、歯をカチカチ言わせていた。
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