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「てめぇ!人のケツをポンポン蹴るんじゃねぇ!」
楠木は土方を無視して部屋を飛び出すと、一気に階段を駆け下り、一階フロアに到達した。
「わっ!?」
楠木は、足を滑らせて膝をついた。見ると床には無数の空薬莢が転がっていた。
「畜生!なぜ倒れない!?」
声の方を見ると、何人かのSTS隊員が銃を乱射していた。すぐに弾切れを起こし、慌てて予備弾倉に手をやる隊員もいる。楠木は手近の隊員に、
「ちょっと!何なの!?」
「おぉ、楠木か!あれを見ろ!」
顔見知りの隊員だった。額から汗が滝の様に流れていた。彼が指差す方向に視線を移動させる。
「ちょっ・・あれ、人質!?撃つの止めなさいよ!?」
そこにいたのは、ワンピース姿の若い女性だった。少なくとも、犯人には見えない。だが、既に体のあちこちから血が噴き出していた。恐らく隊員達に撃たれた跡だろう。そして、その足元には、首から血を流したSTS隊員が倒れていた。
「なんなの!?どういうこと!?」
さすがの楠木も、ワケがわからないという風に言った。
「あの女の仕業だよ!見てわからないか!?」
その隊員はそう言って、再び銃口を女に向けた。躊躇いなく引き金を引く。
タタタタ!!
リズミカルに弾丸が吐き出され、女の白いワンピースを切り裂き、さらに赤い花を咲かせていく。うち1発が、女の額に命中した。
「アア・・・」
女は、力無く呻くと力が抜けた様に膝を折り、そのまま床にうつ伏せに倒れた。隊員達は、近寄ろうとせず、銃を構えたまま互いに顔を見合わせて、迷っている様子だった。
「・・じれったいわね」
楠木は苛立ちを言葉に出して言った。そして、ツカツカと女の死体の側に来ると、首筋に指を当てた。
「死んでる・・だけど何?この体温の低さ。まだ時間は経ってないハズ・・まるで死人・・ん?」
女の死体を調べていた楠木は、自分のブーツの踵を何かに掴まれた様な感触を感じて振り向いた。
「うわっ!?」
楠木は思わず声を上げた。普段から冷静沈着がウリの彼女も、さすがに動揺を隠せなかった。なぜなら、死んでいたハズの隊員が彼女のブーツを掴んでいたのだから。
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