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応射する銃声も聞こえてくる。ジョージからの通話が耳元で鳴った。
「敵、総攻撃。こちらの周囲にすべての兵力を結集しているかもしれない」
「なんとか拠点を死守してくれ。時間を稼ぐんだ」
「了解。ただ今回はちょっときつい」
タツオは目に浮かぶようだった。制圧戦のセオリーだった。二段に分けた兵力で、全力の援護射撃と前進をおこなう。つぎは前進と援護を交代して、後ろの兵が前にすすむ。キャタピラーで小石を踏み潰していくようにじりじりと距離を詰め、制圧地区を拡大していく。敵より優位な火力とマンパワーがある場合にとる基本戦術だ。ただし、このやりかたには相当のダメージを覚悟しなければならない。それでこの時間まで最後の手を打ってこなかったのだろう。
銃声が一瞬止んだ。続いてまた援護射撃が始まる。
「今の攻撃でやつらは何メートルくらいすすんだんだろうな」
テルがそういって、自分の自動小銃を点検している。タツオは銃声のみで銃撃のフラッシュが見えない拠点の方向に目をやった。
「わからない。5メートルか15メートルか。やつらがジョージたちに近づいたのは間違いない」
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