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圧倒的な敵にじりじりとすり潰されるように接近されるときの気分はいかなるものか。タツオは想像するのを止められなかった。先ほどまでいっしょにいた友はこれから襲撃されようとしている。
ジャクヤと目があった。銀の目は底知れない輝きで、感情をまったく読ませなかった。タツオはうなずくといった。
「ぼくたちも敵陣の奥深く潜入しよう。拠点に敵はほぼ全兵力を集中させているようだ。今がチャンスだ。出発しよう、谷少尉、天童少尉」
テルが無言でハンドサインを返してきた。先頭に立って岩陰を縫っていく。タツオは安全を確認すると、テルに続いた。夜明けまではもう2時間もない。タツオは足音を殺し、岩場をすり足で駆けた。
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