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朝起きると、仮面ライダーになっていた。
「嘘…でしょ…」
身長ぐらいの背丈がある鏡に、自分を映してみる。
見た目はいつも通り、ユニクロの服を着た、大学生の僕だ。
でも、僕にはわかる。
今の僕は、仮面ライダーだ!
それだけはわかる。
買い置きのカップ麺をすすり、シャワーを浴び、歯を磨いて、そして外に出る。
徒歩で駅まで移動した後、電車移動。
貧乏学生なので、バイクは持っていない。
そして、都心での移動は、車やバイクよりも、電車の方が効率的だ。
駐車場の問題もあるし、定期やSUICAもあるし。
池袋駅で電車を降り、駅地下を歩く。
すれ違う人々の誰も、僕が仮面ライダーだとは気づかない様子。
駅地下を抜け、エスカレーターで池袋駅の東側に出ると、そこにはサンシャイン60通りがある。
大きな道の十字路から左斜めに切り込んだ、若い歩行者だらけの道で、60階建の複合ビルディング「サンシャイン60」へと向かう道だ。
左手にはハンバーガー屋。そこを過ぎるとシネコンが左右に1つずつ。東急ハンズを越えて、いわゆる「乙女ロード」という地帯にたどり着く。
「腐女子」と言われる若い女子達の、出現率が高い所だ。
「――この場合、一見弱気なこの男の子が、実は攻めで――」
「――普段は何でも出来る強気なお兄ちゃんが、実は受けで――」
「そこ! 放っとくと、すく腐るんだから!」
「賞味期限短すぎ!」
女子達のそんな会話が、通りすがりに聞こえてくるが、ちょっと良くわからない。
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