第1話 僕には、バイクはいらない!

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 朝起きると、仮面ライダーになっていた。 「嘘…でしょ…」  身長ぐらいの背丈がある鏡に、自分を映してみる。  見た目はいつも通り、ユニクロの服を着た、大学生の僕だ。  でも、僕にはわかる。  今の僕は、仮面ライダーだ!  それだけはわかる。   買い置きのカップ麺をすすり、シャワーを浴び、歯を磨いて、そして外に出る。  徒歩で駅まで移動した後、電車移動。  貧乏学生なので、バイクは持っていない。  そして、都心での移動は、車やバイクよりも、電車の方が効率的だ。  駐車場の問題もあるし、定期やSUICAもあるし。  池袋駅で電車を降り、駅地下を歩く。  すれ違う人々の誰も、僕が仮面ライダーだとは気づかない様子。  駅地下を抜け、エスカレーターで池袋駅の東側に出ると、そこにはサンシャイン60通りがある。  大きな道の十字路から左斜めに切り込んだ、若い歩行者だらけの道で、60階建の複合ビルディング「サンシャイン60」へと向かう道だ。    左手にはハンバーガー屋。そこを過ぎるとシネコンが左右に1つずつ。東急ハンズを越えて、いわゆる「乙女ロード」という地帯にたどり着く。  「腐女子」と言われる若い女子達の、出現率が高い所だ。 「――この場合、一見弱気なこの男の子が、実は攻めで――」 「――普段は何でも出来る強気なお兄ちゃんが、実は受けで――」 「そこ! 放っとくと、すく腐るんだから!」 「賞味期限短すぎ!」  女子達のそんな会話が、通りすがりに聞こえてくるが、ちょっと良くわからない。
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