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これまでは、呼び出されたビルの一室で録画された容疑者の取り調べ映像を確認するだけだったのだ。
それでも、犯罪者に特有の表情は理解できた。
その意味でいけば、水上は間違いなく犯罪者のソレを持っている。
ぞっとするぐらいに。
部屋の中の扉が開けられ、水上が予定の席に座る。
モニターには水上の顔が詳細に映っていた。
「さて、頼んだぞ相棒」
佐竹さんが表向き茶化した笑みを僕に向けてから、水上の待つ室内へ向かった。
やさぐれた中年の相棒を持った覚えはないけれど、仕方ない。
部屋に入ると佐竹さんは、挑発するみたいにテーブルに手をついて水上の顔を覗き込む。
「なあ、如月くん。声を掛けても大丈夫かな?」
「ええ、全然大丈夫ですよ。斉藤さん」
水上は、多分僕にしかわからないけれど、顔を顰める。
「水上はずっとあの調子で一言も話さないし、表情すら変えない。拘留期限は明後日の午後、つまりそれまでに証拠を見つけないと奴は解放される」
斉藤さんは苛立ちを含んだ声でそう告げる。
モニタの前で座る僕の横で画面を覗く斉藤さんの拳は固く握られていて、怒りが滲んでいた。
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