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「表情は変わってますよ。佐竹さんって人を怒らせるの上手そうですねぇ。水上、イライラしてます」
「えっ? そうなのか?」
「ええ、暫く様子をみましょうよ」
佐竹さんは、水上の背後に回り可笑しな物でも確認する風に肩越しに、又覗き込む。
それからゆっくりとテーブルを一回りして、どかっと腰を下ろした。
後から室内に入った三沢さんは、部屋の隅でパソコンを開いて座っている。
記録係みたいだ。
「良かったなぁ、水上。もうすぐ拘留期限が終わるぞ。お前の尋問も明後日の午前が最後だ」
水上は相変わらずの無表情……斉藤さん達には、そう見えてるのだろう。
「腹立つけど、嬉しそうな顔してますよ斉藤さん」
「ふぅ……それにしても、厄介な奴だ」
「大丈夫ですよ。佐竹さんが水上を怒らせたから、わかり易くなりました。斉藤さん、最初は僕から質問して良いですか?」
「ああ、頼む」
手元にあるファイルを開く。
見たくもないスプラッタな写真が目に入った。
くるっとそれをひっくり返して、被害者の名前を確認する。
河合真美子……僕と同じ年齢の女子大生。
どこから集めたのかわからないけれど、プロフィール写真は心底楽しそうに笑っていた。
けれど、感傷に浸る暇はない。
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