プロローグ

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佐竹さんが真面目な顔で考え込んでいる。 その姿はやっぱり刑事さんなのだ。 「あの、そもそも水上はどうして逮捕されたんですか?」 佐竹さんが不快そうな声で僕に答える。 「事件のひと月前だ、帰宅途中のOLが井之頭公園に引きずり込まれた。幸い逃げ出したし軽い怪我で済んだ、証言から水上が浮かんだがOLは訴えを取り下げた。 まあ、表沙汰になって妙な噂が流れるのを恐れたんだろう。あの事件の後も、水上は同じ時刻に防犯カメラに映っていた。斉藤が説得して、彼女に再度頼み込んだ」 「じゃあ、よくわからないけど起訴されても軽く済んじゃうって事?」 「そう云う事だ。おそらくこのままなら釈放される。証拠が見つからなければ、もう一度引っ張るのは難しくなる。あいつは、そんな事良く知ってるさ。元警官だからな」 「えっ? 警官だったの?」 「そうだ、奴は警察の手口を熟知してるんだよ」 斉藤さんが憂鬱そうに呟いた。 三沢さんが言葉を続ける。 「水上が防犯カメラに映ってたって言っただろ? 映ってたのは一か所だけだった、水上のマンションから公園までは歩いて十分以上掛かる。 その間には、幾つも防犯カメラがある。だが、奴が映ったのはたった一つ。水上は……犯行現場が担当のエリアだったんだ」 なるほど、それなら人に見られずに犯罪を犯す事も可能な気がした。 人が少ない道も、防犯カメラの設置場所も全て理解していたのだ。 あれっ?
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