515人が本棚に入れています
本棚に追加
「水上達也を連れて来ました」
付き添いの警官に見られないように壁際で後ろを向いて待つ。
キィっと小さな音とドアが閉まる音。
乗り気ににはなれないけれど、こんな事は早く終わらせたい。
水上は午前中と同じ様に室内に消えた。
「行くぞ、如月」
「はいはい、相棒さん」
「頼む、如月くん。最後のチャンスなんだ」
斉藤さんの声援なんか受けて、佐竹さんの後を追った。
ドアの閉まった室内は、思った以上に閉鎖的に感じる。
こんな場所でずっと黙秘するなんて、相当な神経の持ち主なのだろう。
きょろきょろしていると、佐竹さんが部屋の隅に座れと顎で合図する。
顔を捻れば、水上の横顔だけしか見えない。
まあ、いざとなれば正面に回るしかないだろう。
「不味い昼飯も。明日までだな、水上よ」
パソコンを叩く振りをして水上の表情を確認する。
勝ち誇った顔だ。
「おっ? しまったな、ちょっと昼飯を食いすぎた。おい、しばらく水上の話し相手になってくれ。すぐ戻るからな」
「ええっ? そう来ますか?」
「ああ、お前じゃ聴取は無理だろ。どうせ、こいつは何も話さん。適当に話し掛けてりゃいいさ。じゃあな」
「はぁ……困った人だなぁ」
最初のコメントを投稿しよう!