515人が本棚に入れています
本棚に追加
下手な芝居をしながら、佐竹さんが部屋を出て行く。
まあ、この方が早いのは間違いない。
出来の悪い新人警官の振りをして、水上の前に座った。
怪訝な表情で僕を睨んでいる。
嘘つき、そうも取れる顔だ。
ああ、そうだ。考えてみたら水上は警官だったのだ。
僕みたいに若い刑事がいない事など承知の上だろう。
「そうそう、水上さんの想像通りだよ。僕、ただの大学生」
「でしょ? どうして僕が此処にいるか不思議だよね?」
「ねえ、凶器のナイフだけどさ。水上さん、捨てなかったんだね。やっぱりコレクションしたいもんなの?」
ぎょっとして、水上の表情が揺れる。
面倒だ……まあ、はたから見たら独りごと呟く変な奴に見えるだろうけれど、そんな事に構ってる暇はない。
「ねえねえ、自分の部屋に隠した?」「通勤中のコインロッカー?」「あっ、もしかして会社の中とか?」
「水上さん、何処かに別の部屋でも借りてる?」
きょろきょろと目が動き出す。
明らかに動揺している。
思いつく事を聞くしかない。
「あっ! 誰かに預けた?」「預けた相手は、女の人刺したナイフだって知ってるの?」「友達?」「会社の人」「犯罪の仲間とか?」「あっ! じゃあ身内だ」
「やめろ! 俺は何も話さん!」
間違いない!水上は身内にナイフを預けている。
質問を止めるわけにはいかない。
最初のコメントを投稿しよう!