プロローグ

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下手な芝居をしながら、佐竹さんが部屋を出て行く。 まあ、この方が早いのは間違いない。 出来の悪い新人警官の振りをして、水上の前に座った。 怪訝な表情で僕を睨んでいる。 嘘つき、そうも取れる顔だ。 ああ、そうだ。考えてみたら水上は警官だったのだ。 僕みたいに若い刑事がいない事など承知の上だろう。 「そうそう、水上さんの想像通りだよ。僕、ただの大学生」 「でしょ? どうして僕が此処にいるか不思議だよね?」 「ねえ、凶器のナイフだけどさ。水上さん、捨てなかったんだね。やっぱりコレクションしたいもんなの?」 ぎょっとして、水上の表情が揺れる。 面倒だ……まあ、はたから見たら独りごと呟く変な奴に見えるだろうけれど、そんな事に構ってる暇はない。 「ねえねえ、自分の部屋に隠した?」「通勤中のコインロッカー?」「あっ、もしかして会社の中とか?」 「水上さん、何処かに別の部屋でも借りてる?」 きょろきょろと目が動き出す。 明らかに動揺している。 思いつく事を聞くしかない。 「あっ! 誰かに預けた?」「預けた相手は、女の人刺したナイフだって知ってるの?」「友達?」「会社の人」「犯罪の仲間とか?」「あっ! じゃあ身内だ」 「やめろ! 俺は何も話さん!」 間違いない!水上は身内にナイフを預けている。 質問を止めるわけにはいかない。
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