エピソード・1

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僕が住む街は、横浜と呼ぶにはそれらしさが無い。 異国情緒が漂う煉瓦の建物も、海すらも遠い。 いわゆる『横浜』と東京の間ぐらいの場所だと言えば良いだろうか?   東京から見れば多摩川を渡るのだからのどかな場所。 おんぼろのアパートは駅からも外れた場所で、のどかと云うかただの田舎だ。 部屋にはテレビは無い。 理由は説明するまでもないだろう? どれだけ俳優が役に没頭しようと、セリフと違う表情が見えたりしたら台無しだと思わないか? 定食屋でバラエティー番組などを目にした日には最悪だ。 楽しそうに雛壇で笑うタレントたちは、獲物を狙うみたいな顔をしている。 関西弁の大物司会者の言葉に、いかに素早く対応して画面に映るかが彼らの価値なのだから責めるわけにはいかないし、 きっと僕だけが笑えないのだから、僕がテレビを見なければ良いのだ。
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