エピソード・1

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子供の頃はそうでも無かった。 テレビのモニタは解像度が低くて、こんな風に感じる事は少なかったのだ。 デジタルやらハイビジョンのお蔭で僕はすっかりテレビを見る事が出来なくなった。 確かに、僕は他人との交流が苦手ではある。 けれど、それは生まれついて抱えた妙な能力の所為であって本当の人嫌いではない。 電話はまだマシだけれど、頭の中で相手の表情が言葉と同時にフラッシュして感情が読めたりしてしまう。 僕が気楽に他人とコミュニケーションが取れるのはネットの世界だけだ。 文字の世界にも独特の感情は織り込まれるけれど、顔を見て話す事に比べたら数万倍気が楽だ。 <おはよう、幸也くん。起きてる?> <朝だからね。起きてシャワー浴びたトコ> みのりさんは『友達』の一人だ。 年齢は僕より少し年上らしい。 もっとも、名前はハンドルネームだし年齢なんて幾らでも誤魔化す事が出来るのだからどうでも良い事だろう。 東京の近郊に住んでると云うのも本当かどうかわからない。
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