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あっと!断っておくけれど、そもそも僕は人生を語る程生きてるわけじゃない。
カラ梅雨だった先月の真ん中辺りでハタチになったばかりなのだ。
両親は健在だし、虐待を受けて育ったりもしていない。
適度に身体は動かしていて、余計な脂肪もなくいたって平凡な容姿だろうと自分では思っている。
大学の受験で地元を出て、横浜のオンボロなアパートの一階で一人暮らし。
窓からは大家の飼い猫が我が物顔で出入りするけれど、餌をねだるわけでもない。
もっとも、餌をねだられる方がマシかもだ。
形ばかりの狭いベランダに彼女は時折プレゼントを置いて行く。
彼女にすればプレゼントなのだろうけれど、コオロギやバッタの骸(むくろ)は僕の趣味じゃないからだ。
彼女には大家の付けた名前はあるけれど、僕はただ『ネコ』と呼ぶだけだ。
今朝も勝手に網戸を開けて、眠りから覚めた僕を確認すると『ニャッ』と一鳴きする。
彼女に名前がある様に、僕にも名前はある。
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