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<あーそんな事ないって。偶然貰っただけのバイトだよ>
<わかってないなぁ……やっぱり才能なんだよ。私なんて、なーんにも出来ないんだもん>
<そんな事ないよ……みのりさんだって凄いよ?>
<えっ?>
<人見知りの僕を癒してる>
<なるほど……幸也君限定だけどね。あっ、ごめん検査だってさ。またね! 幸也くん>
<うん、頑張って!>
年齢も顔も育ちも知らない。
けれど、今の僕に一番近い人だと感じているのだから不思議だ。
この頃には、彼女の携帯の番号だけは知っていた。
彼女のメッセージに紛れていたからだ。
もしも会いたいと言われても、きっと僕は断ると思う。
想像の中の彼女は嘘をつかないし、会っても目を合わせない男に二度は会いたいと思わないだろう。
夏枯れ……そんな言葉を思い浮かべていた時、僕がリアルで唯一会話をする相手から電話が鳴る。
年中不機嫌な中年男。
直接電話してくるのは珍しかった。
「珍しいですね。電話なんて」
『暇か? 如月』
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