エピソード・1

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<あーそんな事ないって。偶然貰っただけのバイトだよ> <わかってないなぁ……やっぱり才能なんだよ。私なんて、なーんにも出来ないんだもん> <そんな事ないよ……みのりさんだって凄いよ?> <えっ?> <人見知りの僕を癒してる> <なるほど……幸也君限定だけどね。あっ、ごめん検査だってさ。またね! 幸也くん> <うん、頑張って!> 年齢も顔も育ちも知らない。 けれど、今の僕に一番近い人だと感じているのだから不思議だ。 この頃には、彼女の携帯の番号だけは知っていた。 彼女のメッセージに紛れていたからだ。 もしも会いたいと言われても、きっと僕は断ると思う。 想像の中の彼女は嘘をつかないし、会っても目を合わせない男に二度は会いたいと思わないだろう。 夏枯れ……そんな言葉を思い浮かべていた時、僕がリアルで唯一会話をする相手から電話が鳴る。 年中不機嫌な中年男。 直接電話してくるのは珍しかった。 「珍しいですね。電話なんて」 『暇か? 如月』
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