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愛想ゼロの中年男。
他人の事をとやかく言える身分じゃないけれど、この人の人生って楽しいのだろうか?
「暇ですよ。わかってる癖に」
『そうだろうな。ちょっと出て来ないか? お茶でもしよう』
「へっ? 佐竹さんと……お茶?」
『そうだ。不満か? 場所はメールする。じゃあな』
まったく意味が分からない。
まあ、気乗りはしないけれどこの処退屈で仕方なかったのだ。
水上の事件は、派手に新聞を飾った。
水上の実家には、隠されたナイフが三本と開封されていなかった宅配の包みが一つ出て来たみたいだ。
観念したのだろう、水上は過去の事件をつらつらと語ったらしい。
人間って分からない……もうコレクションを手に出来ないのだから、水上には隠す事すら意味が無かったのかもしれない。
それはそうと世の中は不思議だ。
世間は狭いなんて、普通の人は言うらしいけれど僕には無縁だと思っていた。
極端に交友関係が少ない僕には当然の事で、友人と友人が繋がるなんて想像もつかない世界だった。
夏の真ん中で僕が体験したのは、そんな偶然の重なりだった。
僕には随分貴重な体験だったし、結果的には僕の交友関係も少しだけ増える事になったのだ。
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