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佐竹さんは、ぶっきらぼうに頷いた。
しかし、横浜のオープンテラスで不愛想な中年男とフレッシュジュースを啜る僕は可哀想な男だ。
しかも、もうすぐ此処へ来るのは佐竹さんの娘で……
あまり容姿は想像したくない。
「まあ、良いですけど……」
二口目のジュースに手を伸ばした時だ。
予想なんて当たるものじゃないと思い知らされた。
薄いひらひらしたワンピースは、夏の陽射しにぴったりのオフホワイト。
すっと伸びた背筋で僕を見て微笑んでいる。
「パパ。久しぶり」
「ああ、元気だったか?」
「うん、パパも元気だった?」
言葉以上にお互いを思いやっている。
まあ、彼女が僕に向けた笑みの中には不安も含まれているけれど。
「ああ、紹介する。如月幸也くん。パパの代わりにお前の役に立ってくれる筈だ」
どうやら『パパ』に対しては絶大な信頼があるみたいだ。
会話からすれば、離婚して別々に暮らしているのだろう。
「如月さん……お願いします! みのりを助けてください!」
心底焦って話す彼女の口から飛び出した名前。
まさか、それが彼女の事だとは、その時には思わなかった。
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