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「佐竹さん、ちょっと」席を立ち、店の隅へ呼ぶ。
そもそも、この中年男は言葉が足りない。
一体、僕の事をどの様に紹介しているのだろうか?
「ああ、言ってなかったか?」
短い電話と、会ってからの数回のやり取りにそんな会話があるわけがない。
「僕が聞き漏らしてなければですけどね……」
「警察の仕事を手伝ってくれてる、凄腕のメンタリストだ」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ? そんな漫画みたいな話……」
ちらりと彼女の顔を見る。
「信じてるみたいですね……どうして佐竹さんに、あんなに可愛くて素直な娘さ――」
頭を叩かれたのは、小学生の時以来だ。
怒った表情の癖に、実際は照れているのだから勘弁しておこうと思った。
「それで? 頼んでも良いのか?」
「まあ……誰にも僕の事を話さないって口止めしておいてくれればですけどね」
自慢げな表情は、そんな事は当然だといった感じだろう。
それにしてもメンタリストって……
あれは、微細な表情を読み取る力とマジックの要素を融合させた物だと思う。
まあ、否定もしないけれど僕には理解できない。
余程、図太い神経でもしていないと大変だと思うのだ。
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