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「仕方ない。報酬は無さそうですねぇ」
「ああ、これが事件でなければだけどな」
「刑事の勘って事ですね?」
「そうだ、もう一つ頼みがある。娘を危険にさらすなよ」
「はいはい、でも僕は武闘派じゃないですからね」
佐竹さんは嘘つけ、と表情で告げて僕の腹に拳を当てた。
僕の暇つぶしはトレーニングとランニングで脂肪は殆ど無い。
どうやら、そんな事はお見通しらしい。
「空手でも合気道でも教えてやるから、今度道場へ来い」
「結構です」
「まあ良い、後は頼んだぞ」
「ええっ? 帰っちゃうワケですか?」
「俺も案外忙しいんだ」
そう言い残し、椅子に座った娘に声を掛けるとそのまま立ち去った。
勝手なもんだ。だが、忙しいのは本当だろう。
仕方ない、こうなると苦手だなどと言ってはいられないのだ。
「あー、とにかく話を聞かせてくれるかな?」
目の前の娘はクスクスと可笑しそうに笑っている。
「えっと、如月さん。私の名前ぐらい聞いてくれないかな?」
「あっと、そうだね。それじゃ名前は?」
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