エピソード・1

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「仕方ない。報酬は無さそうですねぇ」 「ああ、これが事件でなければだけどな」 「刑事の勘って事ですね?」 「そうだ、もう一つ頼みがある。娘を危険にさらすなよ」 「はいはい、でも僕は武闘派じゃないですからね」 佐竹さんは嘘つけ、と表情で告げて僕の腹に拳を当てた。 僕の暇つぶしはトレーニングとランニングで脂肪は殆ど無い。 どうやら、そんな事はお見通しらしい。 「空手でも合気道でも教えてやるから、今度道場へ来い」 「結構です」 「まあ良い、後は頼んだぞ」 「ええっ? 帰っちゃうワケですか?」 「俺も案外忙しいんだ」 そう言い残し、椅子に座った娘に声を掛けるとそのまま立ち去った。 勝手なもんだ。だが、忙しいのは本当だろう。 仕方ない、こうなると苦手だなどと言ってはいられないのだ。 「あー、とにかく話を聞かせてくれるかな?」 目の前の娘はクスクスと可笑しそうに笑っている。 「えっと、如月さん。私の名前ぐらい聞いてくれないかな?」 「あっと、そうだね。それじゃ名前は?」
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