エピソード・1

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「高村美咲。苗字がパパと違うのは……説明するまでもないよね」 微笑んでいるけれど、随分と悲しそうな表情で『パパ』の事が本当に好きなのだと感じる。 「じゃあ、高村さん――」 「如月くんって年齢は?」 「はたちだけど?」 「じゃあ、美咲とか……美咲ちゃんって呼んでくれないかな? 年上の人に『さん』付けで呼ばれるとくすぐったいもの」 ストレートの黒髪、薄い化粧にナチュラルなブラウンの瞳。 揺らぎもしないで真っすぐに僕を見る。 僕が本当に役に立つのか品定めする視線に変わっている。 それはすなわち真剣な頼み事であるって証拠だろう。 佐竹さんの娘だとはいえ、生身の人間…… しかも女の子と向き合うのは久しぶりだ。 ネットの中でなら、みのりさんがいるのだけれど、文字と会話では勝手が違う。
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