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「わかりましたよ。ただでさえ蒸し暑いのに、寝つきが悪くなったら最悪ですから」
車から降りて、受付みたいな場所で住所と連絡先と身分証を出させられる。
大きなデジタル表示の時刻を確認して時間を記入した。
「どちらの部署へ?」
受付の担当者の言葉に、背後の佐竹さんが身体を乗り出して耳打ちする。
怪訝な表情で、ちらりと僕を見て、首から下げるパスを手渡した。
ジーンズにTシャツの若造が行くべき場所では無さそうだ。
建物の中に入れば、普通のOLさんみたいな人や、会社員みたいな人や、まあ当然だけれど制服の警官もいたりしてそれ程、僕に注目する人もいなかった。
エレベータで降りた先は、一階のフロアとは違ってピリピリした空気が流れている。
廊下は広くて清潔なのだけれど、飾りはある筈がなくて、明るい癖に嫌な感じ。
無言で敬礼する制服の警官に、佐竹さんは軽く手を上げて先へ進む。
幾つかあるドアを開けて、僕を先に部屋に通した。
「お疲れ様です。佐竹さん」
「ああ、奴はどうなんだ?」
「相変わらずです。一言も話さず、何を言っても無表情な侭です。彼……ですか?」
「気に入らんか?斉藤」
「いえ……そう言うわけでは」
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