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訝しがっていると言うか、口惜しさと疑いと情けなさが混じった表情で斉藤と呼ばれた男が僕を見る。
部屋に居たのは二人。
明らかに不満そうに、残りの一人が口を開く。
「佐竹先輩……先輩を疑うわけじゃない。けれど時間が無いんです、僕らは彼に関して確証が欲しい」
アウェーだ。
出来るものなら今すぐに帰りたい。
そもそも、疑われてまで付き合う義務は無いのだ。
「そうだろうな。三沢の言う事ももっともだ。悪いな、如月。すまないが彼らに見せてやってくれ」
「うわっ! 狡いよ佐竹さん。こんな時だけ丁寧な言い方……」
これだから大人って嫌いだ。
いつもは横柄な癖に、わざとらしく丁寧な言葉を遣うのだ。
「良いから、お前もこんな場所に長く居たかないだろ?」
ごもっともな話だ。
「えっとですね。誰でも良いです、僕の質問に『はい』って答えて貰えます?」
俺がやろうと手を上げたのは『確証が欲しい』と言った三沢さんだ。
ふぅっと深呼吸をして、僕の前に立った。
思い切り作った無表情。まあ、当然だ。
「三沢さん、彼女居る?」
「はい」と三沢さんが表情を変えずに答える。
僕は間髪入れずに質問を続ける。
「年上?」「この建物にいる?」「同じ部署?」「昨日会った?」「今朝は会った?」「一緒に泊まった?」「刑事さんの部屋?」「彼女の部屋?」「もう良いですよ」
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